作品に関するその他のこと | ノートルダムの鐘

原作

「奇跡御殿」とは

「奇跡御殿」(Cour des Miracles / court of miracles)はグランゴワールが道に迷ってしまった際に物乞いたちに追われ、たどり着いてしまう場所のこと。
「Cour des Miracles」は13世紀以来、パリの泥棒や物乞い、移民、犯罪者たちの生活の場となっていた場所で、いわゆる貧民街やスラム地区にあたる。彼らは昼間は手や足につくりものの傷をつけたり身体が不自由なふりをして街で物乞いなどをするが、夜になってこの場所に帰ってくるとその変装を取り払い傷や障害がなくなってしまう、その様がまるで奇跡が起こって治ってしまったかのように見えるため、いつしか「Cour des Miracles」(直訳:奇跡の裁判所)と呼ばれた。日本語版では「奇跡の法廷」「奇跡御殿」と訳される。

エスメラルダの素性

エスメラルダは本来はジプシーの生まれではなかったが、生まれてしばらくしてから母親の元からさらわれてしまい、ジプシーたち育てられた。原作では実の母親はギュデュールという元娼婦。ギュデュールは長らくジプシーに自分の赤ちゃんを連れ去られたと考えていたためジプシーそのものを激しく憎悪しており、エスメラルダにもことあるごとに悪態をついていた。それぞれが片方ずつ持っていた赤ちゃん用の靴から互いが親子であることに後々気付くことになる。

「聖域」とは

原作では「駆け込み場」と記述されている安全地帯となっていた場所(およびそこにある小部屋)と思われる。中世には教会の中を始めとして多く存在していた。犯罪者や処刑が決まった囚人であっても、その場所に入ってしまえばたとえ誰であっても手が出せなかった。ただし一歩外に出ると逮捕や処刑が待っているため、「駆け込み場」の外に出ないようにしなければならかなった。裁判所の最終判決により「駆け込み場」から再度連行されることもあったが、数は少なかった。

アニメーション映画版

作品の評価

『ノートルダムの鐘』はアニメーション映画でも性的描写や殺戮、罪業などといった成人向けのテーマが扱われており、原作から結末を変更してハッピーエンドにしたにも関わらずディズニーの中でもかなり暗く重い作品だと評価されている。

製作チームの”Sanctuary”

アニメーション映画製作チームが働いていたカリフォルニア州グレンデールにある建物は当時のスタッフたちに”Sanctuary”と呼ばれていた。

使用されなかった楽曲

アラン・メンケンとスティーブン・シュワルツはエスメラルダとフィーバスが歌う”In a Place of Miracles”と”As Long as There’s a Moon”という2曲のラブソングを考えていたが、ディレクターのゲイリー・トゥルスデールとカーク・ワイズがその曲が(主人公である)カジモドから焦点を逸らしてしまうと感じたため、使用されなかった。
また、ふたりのディレクターたちは”Someday”が教会で歌うような宗教的な曲の要素が強いと考え、作中ではなくエンディングテーマとして使われることになった。
ミュージカル版では”In a Place of Miracles”と”Someday”が劇中に採用されている。

『陽ざしの中へ』(Out There)

カジモドが『陽ざしの中へ』(Out There)を歌っている途中、カメラがパリの町並みの路地にズームしたとき
1. 『美女と野獣』のベルが歩きながら本を読んでいる。(画面下のほう、井戸の右)
2. 『ライオンキング』のプンバァが二人の男に棒にくくりつけられて運ばれている。(画面下のほう、井戸の左)
3. 青っぽいグレーの服を着た男性が『アラジン』の魔法の絨毯の埃を払い落としている。

クロパンの名前

クロパンの名前はClopin Trouillefou(クロパン・トルイユフー)。Trouillefouの”Trouille”は英語での”fear”で、怖れや恐怖、畏怖などの意味。”fou”は英語での”mad”、”crazy”の意味や、”madman”(狂人)、”jester”(道化師)という意味がある。つまり「恐怖の道化師クロパン」と訳される。(訳し方によっては「恐ろしい狂人クロパン」とかにもなる…)
ジプシーたちの中では操り人形師を担当している。

“Topsy Turvy”とは

「Topsy-Turvy」とは「逆さまの」、「めちゃくちゃの」、「混乱状態の」という意味。中世・ルネッサンス時代の民衆はカーニバルの祝祭の中で、上と下、神聖なものとろくでもないもの、王様と道化を逆さまにしてしまうことによって秩序の破壊と再建、死と再生を、身をもって体験していたという説がある。

カジモドの友達「ガーゴイル」

カジモドの友達であるガーゴイルのうち「ヴィクトル」と「ヒューゴ」は原作小説の作者であるヴィクトル・ユゴーにちなんで名付けられた。また、「ラヴァーン」の名前は当初はヴィクトル・ユゴーのミドルネームにちなんで「マリー」となる予定だったが、後にラヴァーン・アンドリューという女性歌手の名前からつけられたとされている。
実際の大聖堂にあるガーゴイル(ガルグイユ)は彫像ではなく雨樋の役目を果たすもので、彫像のことはシメール(英語ではキマイラ)という。

英語版キャスト

英語版でフロローの声を担当しているTony Jayは1991年公開のディズニー製作『美女と野獣』でムッシュ・ダルクの声を担当しており、ディレクターであるゲイリー・トゥルスデールとカーク・ワイズがその声を気に入っていたためキャスティングされた。
また、司祭の声を担当しているDavid Ogden Stiersは1991年に公開された『美女と野獣』およびその派生作品でコッグスワースの声を担当、1995年には『ポカホンタス』でジョン・ラトクリフ総督の声を担当していた。
フィーバスの声を担当したKevin Klineは2017年に公開されたディズニー製作の映画『美女と野獣』でモーリス(ベルの父)を演じた。
ラヴァーン役のMary Wickes(1910~1995)はこの作品が遺作となり、その死後にCDが発売された。まだ収録されていなかった会話部分は声がそっくりだったJane Withersに引き継がれた。歌唱部分はMary WickesとMary Stout二人の名前が記載されているが、こちらは詳細な経緯などは不明。
ディレクターであるゲイリー・トゥルスデールは「年老いた異教徒」のキャストとして参加している。
ジャリ(エスメラルダのヤギ)の声を担当しているFrank Welker(フランク・ウェルカー)は数多くの動物や怪物の鳴き声を演じていることで有名で、ディズニー作品では『アラジン』のアブー(アラジンの相棒の猿)やライオンキングのムファサやシンバの鳴き声などを担当している。また、英語版(ディズニー版)のとなりのトトロではトトロやネコバスの声も担当。

ミュージカル版

聖アフロディジアス

「聖アフロディジアス」(Saint Aphrodisius)は、ミュージカル版の中でフロローがカジモドに教える聖人の名前。
日本語版では「聖アフロディジアス」、英語では「Saint Aphrodisius」(アフロディシウス)、フランス語では「Saint Aphrodise」と呼ばれる。
キリスト教の言い伝えでは、聖アフロディジアスはエジプト人で、古代エジプトの都市ヘリオポリスの枢機卿または大司祭。聖家族(Holy Family / イエス・キリストと聖母マリア、養父ヨセフ)が「エジプトへの逃避」(Flight into Egypt)をした際にヘルモポリスという街で3人を匿ったとされている。
その後アフロディジアスは斬首の刑に処され、斬り落とされた首は井戸に蹴り入れられてしまうが、その井戸の水が吹き出して首が井戸から出てきたため、斬首されたアフロディジアスは自分の首を拾い上げそれを持って街を歩いたという。また、街の人々がカタツムリを道に撒いたところ、アフロディジアスは1つも壊すことなくその上を歩いてみせ、そのアフロディジアスの様子を見ていた石工がアフロディジアスを狂ったやつだとあざ笑ったところ、石工が石となってしまったという伝説もある。

演出家 Schott Schwartz

現在のミュージカル版で演出を担当しているScott Schwartzは本作で作詞を担当したStephen Schwartzの息子である。

キャスト Nora Menken

英語ミュージカル版CDのキャストのうちCongregation(会衆)とChoir(聖歌隊)として参加しているNora Menkenは作曲を担当したAlan Menkenの娘であり、The Paper Mill PlayhouseLa Jolla Playhouseの公演ではCongregation(会衆)として舞台に立っている。