オーリム(いつか) / OLIM | 劇団四季『ノートルダムの鐘』 ラテン語翻訳

ラテン語歌詞・訳

OLIM OLIM DEUS ACCELERE
いつか、いつの日か、神の祝福が
HOC SAECULUM SPLENDIDUM
この輝やかしい黄金時代が
ACCELERE FIAT VENIRE OLIM
いつかやってくるだろう

構成

この曲は全てオリジナルのラテン語歌詞になっています。
このラテン語歌詞については後述した以外にも様々な指摘がありますが、ミュージカル版CDの20曲目(アニメ版CDでは15曲目)の『いつか(Someday)』と同じ意味になるよう意図して作られたものとされています。
アニメーション映画版でもこの曲と歌詞は登場しますが、1曲目の『ノートルダムの鐘(The Bells Of Notre Dame)』に含まれる形となっています。

解釈

英訳部分の「God speed」は単語として使われる「Godspeed」ならば、「幸運、成功」などの意味になります。また、「God speed you!」で「ご成功をお祈りします。」という意味でもあるからか、「成功の祝福(祈願)」を指すこともあります。直訳ならば「幸福」や「成功」あたりかもしれませんが、作品全体の大きなテーマとして扱われるものであることから、もう少し重みのある訳としたほうがしっくりくるような気がします。

“輝かしい時代” “millennium”とは

ラテン語の意味からは「輝かしい時代」と訳すのが妥当かもしれませんが、後述のラテン語歌詞の英訳では「millenium」(millennium)という単語が出てきます。
「(the) millennium」はキリスト教の教えの中に登場するもので、「至福千年期」、「千年王国」などと訳されます。これは「いつかキリストが再臨し、最後の審判の前日までこの世を治めるという千年間」をのことを指します。
また、端的には「(いつか来るとされる)正義と平和が世を支配する至福の時代、黄金時代」という意味もあります。

また、「黄金時代」は国や人の最も繁栄している、していた時代を指しますが、ギリシャ神話においてはかつて人間が生きたという現在よりも優れた時代のことを指すことがあります。

「黄金時代」の言葉のルーツはギリシャ神話である。ヘシオドスの『仕事と日々』によると、かつてクロノスが神々を支配していた時代が、黄金時代である。
黄金時代には、人間は神々と共に住み生きていた。世の中は調和と平和に満ち溢れて、争いも犯罪もなかった。あらゆる産物が自動的に生成され、労働の必要はなかった。人間は、不死ではないものの不老長寿で、安らかに死んでいった。
その後、ゼウスがクロノスに取って代わると、黄金時代は終わりを告げ、白銀時代が始まった。白銀時代の人間はゼウスに滅ぼされ、青銅時代が始まった。以後、神話の英雄が活躍する英雄の時代、歴史時代である鉄の時代と続くにつれ、人間は堕落し、世の中には争いが絶えなくなった。
───”黄金時代 – Wikipedia

“ACCELERE”について

ラテン語を熟知していない状態なので内容の正誤は不明ですが、Tumblrのある投稿者がcallout post(理由は様々ですが、名指しで相手を強く批判する投稿のことです。)として投稿した内容に、ノートルダムの鐘は『someday』の歌詞の意味に訳されることを意図して”olim, olim deus accelere, hoc saeculum splendidum, accelere fiat olim”という歌詞で始まるがそれは間違っており、それだと“someday, someday, may god quickly be this splendid age, quickly, someday”になると指摘し、本来は”olim, olim dive decurre, hoc milliare clarum, veniat olim”とすべきである、としているものがあります。また、その投稿では、歌詞にある単語の文法的な格変化も間違っている上に”accelere”は(存在する)単語ですらないとして、作詞者がラテン語を知らないと強く主張しています。

この歌詞についてディズニーのファンサイト(Disney wiki)では以下のような英訳が掲載されています。

Olim, olim, Deus accelere (Someday, someday, God speed)
Hoc sæculum splendium (This bright millenium)
Accelere fiat venire olim (Let it come someday)
───”The Bells of Notre Dame | Disney Wiki

この英訳では”DEUS ACCELERE”は”God speed”と訳されているので、その英訳に近づけることが意図された文脈に近いかもしれません。
ただし、上記の英訳の出典は確認していません。
なお、英訳中の「millenium」は正しくは「millennium」と記載されるべきのようです。

単語

・一般的なラテン語の表記としてはマクロン(¯)はない状態で記載されますが、その有無により翻訳時に意味が異なる可能性を考慮して、辞書的表記としてマクロン(¯)有りの表記も記載しました。歌詞の単語1つに対して複数の辞書的表記がある場合は文脈から正しいと推測されるものを選択する必要があります。
・曲用、活用も含めてまとめているため表が長くなりがちです。
・複数回使用される単語もありますが、歌詞と同時にこの表を見やすいよう、ある程度離れて使用されている場合はあえて重複して表に記載しました。

単語 辞書的表記 曲用または活用、および意味
OLIM ōlim
(副詞)
1. その時、昔々
2. [将来的な] ある日、いつか
3. しばしば、しばらくの間
同義語:En; someday
DEUS deus
(名詞 通性)
deusの単数主格/単数呼格
1.(一神教、特にキリスト教の)神、(多神教の)神
2. 神格化された皇帝の形容辞、添え名
Deus
(名詞 通性)
Deusの単数主格/単数呼格
(ユダヤ教やキリスト教での)神
ACCELERE おそらくラテン語に存在しない。詳細は前述。
HOC hōc
(副詞)
(+与格で) 1. こちら(へ)、ここ(へ)
(+対格で) 2. これにより、こういう訳で
hoc
(限定詞/代名詞)
hicの中性単数主格/中性単数対格
これ(ら)は、これ(ら)が
hōc
(限定詞/代名詞)
hicの男性単数奪格/中性単数奪格
SAECULUM saeculum
(名詞)
saeculumの単数主格/単数対格/単数呼格
1. 一族、血族、子孫、血統、血筋
2. 世代、同世代の人々
3. 時代
4. 世紀
5. (俗語)世界
SPLENDIDUM splendidum
(形容詞)
splendidusの中性単数主格/男性単数対格/中性単数対格/中性単数呼格
1. 華麗な、壮麗な、素晴らしい、輝かしい
2. 目立った、際立った、威厳のある、品格のある、高貴な、輝かしい、輝く
ACCELERE おそらくラテン語に存在しない。詳細は前述。
FIAT fīat
(動詞)
fiōの三人称単数現在能動仮定法
1. (連結詞として)~になる、~にされる
2. 起こる(偶然のニュアンスを含む)
3. 起こる(意図的、人為的なニュアンスを含む)
fīat
(動詞)
faciōの三人称単数現在受動仮定法
1. ~する(En; do)
2. 作る、構成する
3. 作り出す、制作する、製作する
4. 指名する、指定する、(神や法令が)規定する
VENIRE venīre
(動詞)
veniōの一人称単数現在能動不定詞
1. (自動詞の)来る
2. (自動詞の)近づく
venīre
(動名詞)
veniōの主格
到来、接近
OLIM ōlim
(副詞)
1. その時、昔々
2. [将来的な] ある日、いつか
3. しばしば、しばらくの間
同義語:En; someday